Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

国連平和大学の授業の話1(学部と全員必須科目)

つぶやいてばかりのブログなので、久方ぶりに学校のことを書いてみようと思います。

旅行のこと、生活のことを綴っていたせいで、「コスタリカで何してるのこの人?」という印象が強いかと思います。
れっきとした大学院生です。ちゃんと勉強もしてます。ただ、勉強に関してはこれまでただ新しいことを学ぶのに必死すぎて振り返る時間がありませんでした。

なので、フィリピンのアテネオ大学に引き続き(気になる人は以下参照)
何を学んだか、残りの半年で何を学ぶか、まとめてみようと思います。

pyomn310.hatenablog.com

この記事には、まず国連平和大学の学部と、全員必須受講の科目について書いてます。
授業のことだけ知りたい人は「授業内容」へ飛んでね。

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Diversity

文字通り世界中からやってきた学生100人以上が集まるキャンパスで、十人十色の価値観が混ざり合う。
話す言葉、ファッション、食べるもの、生活観、思想、宗教など、根本から違う。

おお、これが多様性なのか。良いとか悪いとかそういう以前に、そのあまりのバラエティに驚いて途方に暮れる。

特に強く感じたのは、ビーガンやベジタリアンが多いことと、ペットフレンドリーな環境。

まず、環境保護を理由にビーガンやベジタリアンになったという人がめちゃくちゃ多い。主に西洋人。

日本では考えにくいけれど、「肉や魚の生産には大量の二酸化炭素排出と水の消費が必要になるので野菜を食べる。」というロジックが前提になっている。もちろん、健康の為とか、家族がベジタリアンだったから私も自然に・・・とか、お肉を受け付けない身体なんだとか、理由は様々なのだけど、環境保護のアクションとして食べ物を選ぶというのは、正直私にとってはとても新鮮な価値観だと思った。

次に、ペットフレンドリーな環境。

キャンパスは開放的で、カフェテリアなんかは室外でコスタリカの街を見渡せる丘の上にある。
ご飯を食べていると、放し飼いのペット(犬)が寄ってくる。つぶらな瞳で「飯をくれ」と訴える。「ああ、あの犬はあのアメリカ人の子のペット」「あの犬はあの先生の相棒だよ」とかなんとかで、そこらじゅうにめっちゃ犬いる。

私はそこまでペットが好きなタイプではないけど、別に犬が嫌いなわけでもない。だからこの環境に関して何にも感じないけれど、アレルギーの人とかいないの?と心配になったことはある。
一つ正直にいうと、流石に授業中に足元ででかい犬が寝ていると落ち着かない。まあ、そういう環境で勉強するのも新鮮で悪くないのだけど。

APSプログラム終了?

ここで一つ残念なお知らせ。日本財団・アテネオ大学・国連平和大学による奨学金プログラムAsian Peacebuilders Scholarship programは、私たちの次(16期生)までで応募終了となった模様。
特にコスタリカの国連平和大学へやってくる学生の大人数はアメリカ人とヨーロッパ人なので、アジア人は貴重なマイノリティだったのだけど、APSがなくなったらアジア人もいなくなっちゃうよな。再来年からガラッと雰囲気が変わってしまいそうな予感がします。

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〇〇主義者たち


これも主に欧米出身の学生に多いのだけど、「主義」を強く持っている人が多い。

例えばフェミニズム。女性の人権についての話になるとめっちゃヒートアップする人がいる。熱心なのは良いことだし、こちらも知らない観点を学ぶ良い機会にはなる。

まあただ、ヒートアップしすぎることもあるんだよな。100人いれば100個の違う価値観があるので、お互いに同意できることとできないことがあるのは仕方がない。なので、おそらくこの多様な場で自分の「主義」を押し付けてしまうことはNGだ。しかし中にはそれを(無意識なのかな?)公にやってのける人もいるので、ドキッとしてしまうことがある。

私はこの辺りに関しては完全に傍観者なので、あくまで超客観的な意見だけど、多国籍な職場で働くことになったら「ファシリテーション」がめちゃくちゃ大切になるんだろうなって、すごく思うのでした。その中でも重要になるのは「それでええやん」と、全員肯定できる力と、全員肯定した上で物事をちゃんと前に進める力。どうやってそんな力をつけるのかは、誰か教えて。

国連平和大学のスケジュール

平和大学のスケジュールは、アテネオの比にならないくらい緩かった。
1コマ三週間を繰り返すので、1つの授業に集中できる。

学期初めの9〜10月は、午前午後ともに授業があったのだけど、課題はただリーディングを事前に読んでくるだけ。あとは授業終わりに簡単な論文や意見をまとめた文章を提出することが求められる。でもそれほど形式張ったものではなく、かなり自由に自分の考えを書くことが許されている印象だった。

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こんな予定だったので、午後に授業がない時期には毎週末旅行に出かけたり、放課後に近場で遊んだりもしてかなりコスタリカ生活を満喫できた(ブログに上げてた旅は、このタイミングでしてたんだね。ただ遊んでいるだけではなかったね。)

国連平和大学修士課程の学部

University for Peace in Costa Ricaの英語コースには、3つの学部がある。

  • Department of Peace and Conflict Studies (平和・紛争学部)
  • Department of Environment and Development (環境・開発学部)
  • Department of International Law (国際法学部)

私はDepartment of Environment and Developmentの中にある3つのコースのうち、Environment, Development, and Peace (EDP)を選んだ。
選択理由は、自分の協力隊時代の職種と企業での経験を考えると、このコースが一番マッチするかなあということと、このコースが一番実地での活動(Field Trip)が多くて座学以上に体験を重視するという点。

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HPに詳しく内容が書いてあるので、他の学部やコースも気になる方はぜひ覗いてみてください。

www.upeace.org

国連平和大学の授業(全員必須科目)

大学院のセメスターはこんな感じ。
9月〜12月: 第一学期
(年末年始休暇)
1月〜 4月: 第二学期
(4月上旬:イースター休暇)
4月〜 6月: 第三学期


①UPEACE Foundation Course + Seminar Discussion

国連平和大学学生全員が受ける必須科目。
「平和」の定義と「紛争」解決のメソッドについて論理的に学ぶ。

(紛争の原因分析、要素、解決の鍵になる方法論についての勉強)

  • Positive Peace and Negative Peace
  • SIPABIO (Source, Issue Parties, Attitude, Behavior, Intervention, and Outcome) conflict mapping
  • Conflict Interventions, Ethics and Management

(平和・紛争学をベースとした様々な学問の基礎講義)

  • Peace and International Law (国際法)
  • Peace and Food Security (環境と食の安全)
  • Peace and Human Rights  (人権)
  • Media, Conflict, and Peace (メディア)
  • Gender, Conflict, and Peacebuilding (ジェンダー)

午前に講義、午後には少人数クラスでディスカッション。

授業の構成は斬新で面白いなあと思ったけど、1日ごとに先生が変わり、たった3時間の講義だけで様々な学問の基礎を学ぶというのはちょっと難しすぎた(基礎の基礎すぎて結局何もわからないことも・・・)。ただ、自分の選ぶ専攻科目(環境)について少し先生から聞くことができて、自分の興味を再確認することができたので、その点では良かったかなと思う。

午後のディスカッションは、博士課程の学生がファシリテーター(司会)となって、学生同士でその日学んだ分野について意見交換をする。
この時に強く感じたのは、日本で受けてきた授業とスタイルが全く違うということ。

「挙手して、発言をする」こと自体も(少なくとも私にとっては)割と勇気のいる行為なのに、ファシリテーターの話を遮ったり、質問している学生の横から質問したり、意見交換の場なのに自分の体験談を長々と話したりする学生がいて、驚いた。「それは流石に止めてよ」と思うような長いスピーチや的外れな発言も、ファシリテーターはうんうんと聞いていたので、何が正解なのかわからなくなることもあった。

だが、やはりこのセミナーから学ぶこともあった。
大多数がアメリカ人のこのグループというのもあって、私たちアジア出身の学生は価値観も常識も経験も異なっていた。それは意見交換の中で大いに話題の幅を広げたし、他の人の話を聞きながら自分の立ち位置について考えることができた。

②THE UN SYSTEM AND UPMUNC

国連平和大学と名乗るくらいだから、必須科目に国連についての授業があるのは自然なことだね。
しかし今年はコロナで入学時期が一ヶ月くらい遅れたせいで、もう一つの授業と両立しての受講になった。
つまり午前に環境に関する授業、午後にこの国連に関する授業を受けることになり、生活にまだ慣れていないこの時期に結構忙しく課題をこなしていた記憶がある。

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この授業では、国際法の文章を読んだり、国連それぞれの組織についての概要を学んだりしながら、上記の授業と同じようにディスカッションの時間が設けられた。国連で働いてみたいと思う自分にとって(そしてここの学生の大多数にとって)、概要や国際法について基本的知識をつけられるのはありがたい。しかし、正直なところ日本語で設けられたサイトに目を通して自習できる程度の表面上の知識のみの講義だったので自分的には午前の環境の授業のリーディングやレポート提出に力を入れる方が真っ当だと思っていた。

でも、講義の中で実際にUNDPで働かれていた方の話を聞いたりできたことは貴重な体験だったと思う。

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いまだに納得がいかないディスカッションの内容がある。それぞれが国の代表としてロールプレイをしながら、「パレスチナ問題」に関して国連総会で議論をするというシュミレーションをした時のことだ。総会で安保理が一言ずつ、紛争関連国が一言ずつ主張した後に、国連の方向性を決めるための採決をするという内容だったのだけど、なんともぐだぐだで、曖昧に終わってしまったことが名残惜しかった。
ファシリテーターがこの日こなかったことと、パレスチナ担当の学生がなんと欠席したことはぐだぐだになった理由の一つだと思う。

ただ、チリ人のクラスメイトが国連職員だったので、見事なまでの司会進行をしてくれたので、常任理事国の「拒否権」の力と、世界の権力の不平等性(小国の声はほとんど国連の採決に反映されない)、そのシステムがなければ支えられない世界のシステムの複雑性についてじっくり考えることができた。

この授業は次のセメスター(3学期)に3日間だけ後半のセッション「THE UN SYSTEM AND UPMUNC」が行われる。


長くなってしまったので、環境の授業については次のブログで紹介します。