国連平和大学の授業(環境学部)
大学院のセメスターはこんな感じなので、今は第二学期真っ最中。
今回は主に第一学期の授業について紹介いたします。
9月〜12月: 第一学期←ココ
(年末年始休暇)
1月〜 4月: 第二学期
(4月上旬:イースター休暇)
4月〜 6月: 第三学期
EDPのコースは毎回2つか3つくらいから選択できたので、とっていないクラスもあります。
私が受講した第一学期の授業を紹介したいと思います。
- Environment Conflicts and Sustainability
- Sustainable Agriculture
- Forest, Forestry and Poverty,
- 一学期を振り返って
Environment Conflicts and Sustainability
環境学部は三つに分かれているのだけど、
その全員が受講必須の授業「環境、紛争と持続可能性」。
この授業では、環境問題に関わる世界の紛争について読み解きながら、ディスカッションを行ったり、短い論述をおこなったりした。
先生はドイツ人で長年コスタリカのエコツーリズムや林業について研究をしているJan (ヤン)先生。
現実主義で人によっては悲観主義という学生もいた。多分取り上げるトピック自体が悲観的にならざるを得ないものだから仕方ないような気もする。
私的には先生の視点はすごく真っ当で、学生の意見に対してはとても寛容な印象を持った。
毎回習った内容に関しての「質問」が準備されていて、小さなグループに分かれてディスカッションを行い、まとめた文章を提出するというのがいつもの流れだった。しかしこの質問の内容が結構難しい。正解のない問いではあるけれど、宿題のリーディングをしっかりして基礎知識を持っていないと答えられないものばかりだった。
自分の意見を持っていてもそれを論理的に文献とかに基づいて語るって難しいから、とてもいいトレーニングになった。
人と意見を交わすことで生きてきた国や環境によっても全く違う視点を持っていたり、案外同じような意見で賛同したりすることもあった。
これが国連平和大学に来て初めての、自分の専攻内容に関する授業だったというのもあって、すごく楽しめたと思う。
この授業で学んだこと概要:
- Global environmental change or environmental crisis
(地球環境の変化と危機)
- Global environmental change and globalization
(地球環境の変化とグローバリゼーション)
- Malthus and his ghosts - Population discourses
(マルサス主義と人口増加に関する議論)
- Critical political economy discourse
(政治経済に関する議論)
- Sustainable development (持続可能な開発)
- Green growth and green economy: a critical look at the foundations
(グリーン成長とグリーン経済)
- Global environmental governance (世界の環境ガバナンス)
- The commodification of nature – Nature as a service provider
(自然資源の商品化)
- Conservation and conflict (保護と紛争)
- Environmental Security (環境セキュリティ)
- Natural Resources and Conflict (自然資源と紛争)
- Climate Change and Security (気候変動と安全)
Sustainable Agriculture
森林伐採、密猟、自然エネルギーの取り合い、武装して違法集団と戦う森のレンジャー・・・そんなことを学んでノリに乗ってきた脳を、次は農業に向ける。ずっと学んでみたかった「持続可能な農業」について、ついに学べる。しかも、これまで授業を受けた誰もが素晴らしかったと言う、Olivia(オリビア)先生のコースだったのですごく楽しみにしていた。結果はまさに期待通り。
自分の知識と経験のなさから、意見を言うのが億劫で苦しかったのだけど、この授業ですごいよかったなーと思うのは、講義と実技ワークショップとフィールドトリップが満遍なく行われて、理論と実技で知識を蓄えていけたこと。
フィールドトリップは3回あり、それぞれ日帰りでコーヒー農家・有機野菜農家・畜産家へ訪問して話を聞いた。(話は全部スペイン語でオリビア先生が英語訳してくれた)
実技は、ぼかし肥料造りとオーガニック肥料造りをそれぞれ行った。
学んだ内容はざっとこんな感じ
- What is "sustainable agriculture"? (持続可能な農業とは)
- Green revolution (グリーン革命)
- Food commercialization (食の商業化)
- Food security
(遺伝子組み換え、農薬や化学肥料の使用のリスク)
- Agroecology principles
(アグロエコロジー/生物多様性を考慮した農業実施のための原則)
- Urban farming(都市農業)
- Aqua Culture(水産業)
- Livestock(畜産)
- Organic certification/fairtrade
(有機栽培証明取得のための手続きと内容・フェアトレードのメカニズム)
Forest, Forestry and Poverty,
第一学期最後にして最高の授業。「森林、林業、貧困」は、フィールドトリップがメインのコース。
4泊5日で森林実験場に泊まり込み、コスタリカの林業や違法集団取締、NGOの植林活動などについて話を聞いたりする。
旅の感じは「グアナカステの木の下で」で書いたので、ここでは授業で学んだ内容をざっと伝えたい。
トリップ前に実施したグループプレゼンテーションは、私からメンバーにお願いしてカメルーンの林業について発表することにした。
どんなことが問題になっているか(森林破壊、違法伐採)
どんな国が関与しているか (違法木材輸入国の大半はアジア:中国、ベトナム、そして日本も!)
どのような対策が設けられているか・問題点は何か(REDD+)
などをまとめて20分間で発表。準備期間が短かったのであまり深くは突っ込めなかったんだけど、調べている中でカメルーン以上にコンゴで違法伐採が大規模に行われていることや、世界的な地球温暖化対策としてのREDD+をJICAが進めていることなどを知ることができてためになった。
*REDD+=熱帯林の減少と劣化対策により 気候変動を抑制するための国際的メカニズム
www.jica.go.jp
学んだ内容はざっとこんな感じ
- Definition and values
(森林伐採の定義と森林の価値)
- Poverty Forest links (貧困と森林の関係)
- Illegal Logging and Timber Trade (違法伐採と木材取引)
- Addressing the biodiversity and climate crisis
(生物多様性と気候危機に関連した考察)
- Market based conservation (マーケット主体の環境保全)
- Nature based solutions (自然主体の環境保全)
- Forest restauration(森林の復興)
一学期を振り返って
環境問題は、緊急を要する割にこれといった解決策がなくて、人間の道徳性や価値観、世界のシステムとか政治とかもたくさん絡んでくる。
だから他の学生と意見交換をすると混沌としていて、終わりのないトンネルをずーっと歩いているような気持ちになる。
そんなことをしている間にも、地球の気温が上がって、毎年来る台風のスケールがどんどんひどくなって、小さな島から海面に飲み込まれて、食糧不足になってしまうかもしれない。悲観的になりがちなトピックだけれど、これまで先人たちが論じてきた内容を学んで、自分の頭で考えられる範囲を広げるという点では、とても有意義な授業だった。
これらの授業を教えてくれた先生たちも、「正解はないけれど、思考を続けること」に重きを置いて学生の言葉に耳を傾けてくれたから、勇気を出してたくさん意見を言うことができた。
第二学期・第三学期については6月ごろにまとめて更新しようと思います。
ではまた!