Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

アテネオ・デ・マニラ大学の授業の話。

Asian Peacebuilders Scholarshipについてと
Ateneo de Manila University の授業内容について知りたい方
は、前半読み飛ばしてもらって大丈夫です。以下目次のコラムから読みたいタイトルをクリックしてね。

「学問は一生終わらない会話なんだよ。」


教授は、時としてすごい名言を残していく。
学術的で深い洞察に基づいた言葉だけじゃなくて、あたたかい、人間味のある優しい言葉も。

オンラインだけれど、オンラインの壁をも超える怒涛の三ヶ月を乗り切った。
初めての大学院にして初めてのオンライン授業。初めての英語での授業。
全てが新鮮で、難しくて、すごくハードだったけど、それだけ本当にたくさんの学びがあった。

忙しい時ほど、隙間時間が長く感じるのは何故なのだろう。

いつもなら持て余す数分
次の予定までの少しの時間

上手に気分転換や違う勉強に費やすことができるのは、いつだって切羽詰まって忙しい時に限る。
際限なく一週間がフリーで、特に提出物や定められたゴールがないと、どうして時間は溶けるように消えていくんだろう。

何が言いたいかというと、大学院が充実し過ぎている

The Beginning Is The Hardest

オンラインなめてました。

ウェビナーみたいに先生の話聞きながら、隙間時間でちょちょっと課題しながら、メインの授業の準備しよ〜って思っていました。

繰り返してたらなんとかなるやろ〜ぐらいに軽視していました。

すると6月から突如始まった英語強化クラスと7月から始まった本格的な学科のクラスについて行くことに必死の日々。
腰が痛かろうが目が渇こうが何時間もパソコンの画面を見ていなければならない毎日。

PDFで共有される論文はipadなので、夜な夜な見つめるのはやはり画面。
ドライアイは免れない。

「最初が一番しんどいねんで」
と、院生の友達や通っている大学院の事務局の人が言っていた。
始まった矢先に正念場が来るというハードさ。

毎日読んだこともないような系統の「論文」という文章を前にして(もちろんAll English)、一晩で2つか3つを読み込んで翌日の授業で意見する必要があったり、グループワークでアイデアをまとめる必要があったので、夜は23時就寝、朝5時起きで毎日ひたすら読んだ。

上記がメインの課題だったのだけど、これだけじゃ終わらないのがアテネオ大学のスケジューリング。
ここに英語の授業の課題が上乗せされる。週に2回求められるプレゼン準備(内容はあくまで学術的なもの)と書くために大量の文献を読む必要がある文献レビューの宿題。これらを期日に間に合うように準備しながら、毎日のルーティンをこなしていく。本当に今振り返っても恐ろしい日々。

There Is No Right Or Wrong

「社会開発学」(Social Development)というテーマは、とにかく広い。

そもそも「開発」という概念について疑問を投げかける。
そして、今の世界で問題になっていること、解決に必要なこと、その方法について紐解いていく。

だからこそさまざまな学問(人類学、社会学、開発学、経済学、政治学など)の視点を拾い上げたディスカッションが授業のメインとなる。

学生の経験(全ての学生が2年以上の海外経験を持ってる)に基づいた意見を求められるので、全員の洞察や意見が多種多様で、面白くて、毎日3時間の授業時間は一瞬のように過ぎ去っていった。

フィリピンの前半プログラムを授業を振り返って思う。
なんて異なる意見に寛容で、優しくて、お互いを敬い合っているクラスなんだろう!と。

先生がそのような雰囲気をつくっているというのも大きな理由だと思うけれど、クラスメイトもまた、じっと全員に耳を傾けていて、一つの意見がまた異なった意見へと展開されていく感覚は、これまでの学校生活では味わったことがなかった感動だった。

多くの学生が口にする「There is no right or wrong」は、意見を言う時の大きな前提になる。
たった一つの正解なんて、そこにはない。

100人いれば100通りの人生があり、100カ国あれば100カ国通りのやり方がある。
全ての意見が立派なテーマになり、会話の素材になる。
そんなあったかな雰囲気が、引け目を感じるほど優秀な人々に混じり込んだ自分でも、声を発することができた大きな理由。

際限のないテーマのなかで、論文から学び取ったことを自身の経験に反映していく作業は、
カメルーンでの日々、日本で当たり前のように過ごしてきた日々を丁寧に見直すことにつながった。

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Beyond Bias

これまで生きてきた中で築かれた価値観と「好み」が、自動的に物事の物事の良し悪しを分類する。
人はそんなふうにできているから、きっと仕方がないこと。

けれど、学問って面白いのは、そういう色眼鏡を取り除く「問い」を投げかけ合う作業なんだよな。

なんで、世界ってこんなんなの?
なんで、こんなことが起きているの?

って、自分が見ている方向からみんなに投げると、びっくりするほど形を変えて色を変えて戻ってくる。
自分が見てた世界の色がカラフルになる。

解決されていない問題にはやっぱり訳があって、
一見「間違っている」と思うような出来事にも「正しい」と筋を通せるシナリオが存在していて。

ただメディアやネットから拾い上げた情報を組み立てて作ったバイアスを振りかざしてしまっていた自分を、丁寧に見直すことができる。そして世界の深みを知り、「終わらないディスカッション」を続ける。「これが学問なんだよ」と教授の声が聞こえてきそう。

Asian Peacebuilders Scholarship とは?

 
略してAPSプログラム。
この奨学金修士課程プログラムは、日本財団・アテネオ大学(フィリピン)・国連平和大学(コスタリカ)によって運営されており、アジア諸国から毎年約30人の学生を応募しています。私は15期生にあたるそう。

「平和」をテーマに開発、法律、経済、教育、環境などのさまざまなテーマから専攻を選び、卒業後には国内・国外問わずグローバル人材として活躍する人が多い。詳細はホームページにて。

私がこのプログラムを知ったのは、協力隊を終えて帰国し、JICAでアルバイトをしていた時。
同期隊員だった友達がこのプログラムを利用して進学を決めたことを知り、内容を聞いた。
学費も、滞在費も、ありがたいことに支給されるし、英語で修士号を取ることができるのでキャリアアップとしても役立つし、
フィリピンとコスタリカの二カ国での生活を体験できるなんて本当に魅力的だと思った。

そしてその友達が試験を受けた2年後に、私もチャレンジすることにした。

現在はパンデミックの影響でフィリピンの授業は一律オンラインになっており、コスタリカもハイブリッド(オンラインと対面の両方)となっている。コスタリカへの渡航は任意で、国によってはビザの取得が難しかったりなどど事情が異なるらしい。日本からは渡航可(2021年9月現在)

先人の方のブログがためになる情報満載なので、興味のある方はこちらをチェック。

>>>応募方法や提出書類など手続きについてかなり詳しく書かれているブログなので応募時にチェックをした。
 少し前のものなので若干現在と内容が異なるところもあるので注意。
www.aps12.net

>>>一年上の先輩のブログ。フィリピンでのオンライン授業内容が詳しく書かれていて準備にとても役立った。
ameblo.jp


各大学のホームページはこちら。

www.upeace.org


www.ateneo.edu

スケジュールや授業内容について

アテネオ大学の授業はこんな感じで私は6月から始まったのだけど、6〜7月は二種類の授業が重なっていて朝から晩まで拘束されていたので本当に苦しかった・・・ご近所さん曰く、当時、やつれてたらしい笑

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English Classというのは、Ateneo Language Learning Centerという機関がAPS生のために実施してくれている英語力強化のための授業。
①Technical Writing (TW): 大学院で求められる短い意見をまとめた文章や論文の書き方の基礎を教えてもらう。
②Professional Oral Presentation (POPs): 学術的な内容を論理的に整理し、効果的なプレゼンテーションを行う方法を教えてもらう。

この二つの授業を受けました。約2ヶ月間オンラインで受けましたが、これを受けた前と後では格段に自分の英語力が違うことが実感できました。週に2回のプレゼン(毎度ネタ探しと計画書の提出が辛い)や、さまざまな論文を引用して文章にする「文献レビュー」の制作には苦しんだけれど、実力になっているんだと思うと乗り越えて良かった・・・。

7月から始まったSocial Development Classというのは、二週間おきに3つに分かれていました。

①Key Concepts and Critical Debates in Social, International, and Transdisciplinary Development

「開発」に関わる様々な論文(アジアの学者が書いたものが多かった印象)を読み、それを踏まえて指示された課題をグループでこなし、授業中はほとんどグループによるプレゼンテーションを聞き、それに意見をしたり教授のフィードバックを聞いたりするというスタイル。
日本語でも出版されているような著名な論文からフィリピンの先住民に関する研究レポートまで広く読みながら以下のようなテーマを学んだ(全てをリストかできていないかも)。

・Definition of Development (様々な学問から見た「開発」の定義)
・Poverty(貧困)
・Spatial Justice (空間的平等性 :土地の使い方や都市の格差についてなど)
・Globalization (グローバル化とその影響)
・Human Rights(人権)
・Co-production/ Co-creation (コミュニティによる開発)
・Sustainable Development(持続可能な開発、SDGs)
・Gender(ジェンダー)

②Social Theory and Transdisciplinary Development

個人的には一番楽しかった授業。内容としては「開発」とはどのように確立された概念なのかを、過去の学者の思想や著書をもとに論理的に理解して行く授業なのだけど、教授が学生の話をめっちゃ汲み取ってくれるし意見交換を楽しめる雰囲気があったので、ディスカッションが中心だった。
グループワークがVlogとInfographicsの作成でちょっと大変だったのだけど、クリエイティブなクラスメイトと一緒に何かを作るのは楽しかった!

・Marxism(マルクス主義)
・Modernity(近代化)
・Neoliberalism (新自由主義)
・Max Weber (マックス・ウェーバの理論について)
・Emile Durkheim (デュルケームの理論について)
・Development in Asia (アジアの開発について)
・De-globalization(脱グローバル化)

③Research Methods in Transdisciplinary Social Development

「調査」をどのように行うかのメソッドを教えてもらうための授業。これが一番レクチャー(教授が話して、学生はメモを取る)系の授業でした。
正直、私には難しかったです。多分理論を教えてもらっただけだからあまりうまくイメージできなかったのだろうな。

①、②の授業は、学んだ理論をもとに自分の経験を論理的に話すために反映する作業が求められたことに対して、この③の授業ではほとんど経験したことないような調査の方法論についてだったので、まっさらなところから学んでいくのに一苦労。

なんとなく調査の過程みたいなのは理解した。卒業プログラムがこの「調査」なので、早くテーマを決めないと・・・。ちゃんと理解できてるのでしょうか、と思いながらなんとか課題こなしてたらあっという間に二週間過ぎた(笑)オソロシイ。

内容としてはこんな感じかなあ
・調査の種類について
・問題提起
・文献レビュー
・量的調査と質的調査
・参加型調査
・調査の際に考慮すべき倫理・マナー

アテネオ大学の授業を終えて個人的に感じる変化

この盛りだくさんの分量をこの3ヶ月に詰め込むアテネオ、恐るべし。
正直、めっちゃキツかった。6〜7月は本当に寝る間を惜しんで勉強した。読み慣れない論文、話し慣れないアカデミックな内容の中で、よく乗り越えることができた!と最後の課題を提出したときには自分を激励したよね。そして見たかった映画やドラマをまとめてみているのが現状なのですが。


変化1: 昔読んでも理解が追いつかなかった本が、面白く感じる。

これ感動した。
大学時代に買った岡真理『記憶/物語』およびE.W.サイード『知識人とは何か』を読み返したのだけど、理解力がまるで違う。んで、面白い!
そりゃ大学時代から随分時は立っているのだけども。当時は小説以外の本は数ページ読んでは睡魔に襲われ、数行読んではどこ読んでたかわからなくなるということが頻発していたのに。
でも視野や思考の広がりと、論文をたくさん読んで特訓したおかげなのかなあと思うと、嬉しいね。今後読める本の幅が広がりそう。

変化2: スケジュール管理も読書もデジタル化

ipad様様。論文はこれがなかったら読めませんでした。ペーパーレスでかさばらないし、本もこれで読むと部屋も狭くならない。
予定表も通知機能があるし、オンライン系の予定が多いのでzoomリンクもそのまま飛べたりするし、もっぱらiphoneとipadにて管理するとすごくスムーズになった。海外でもデバイスは大切に扱おう。

変化3: 英語の読み書きが苦じゃない

クラスメイトとのチャット、電話、クラスでの課題、事務局からのメールなど、全て英語。これまで英語で仕事したことがなかった私にはちょっとハードル高かったんだけど、この3ヶ月で慣れました。

とこんな感じ。

実家に戻って積ん読された本たちを読みながら思う。私、日本語の本読むの早くなってるし、理解力もびっくりするぐらい上がっている。英語やってて日本語力上がるんか。気のせいかな。まあでも、だから言語ってやめられない。

コスタリカはごりごりスペイン語圏なので、Duolingoで絶賛スペイン語勉強中。
このブログは今後しばらくは、コスタリカのことばかりネタにすると思います。

最後まで読んでくれてありがとう!
Adios!!


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