Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

コスタリカで林間合宿した話。

中学・高校時代に「旅行」や「合宿」というと、無条件に心が踊ったものである。

クラスメイトと、普段一緒に過ごさないような場所と時間を共にする。荷造りをして、しおりを読んで、ちょっとしたお菓子やカードゲームを用意して、前日は眠れなくなる。そんな感覚を今も覚えている。

大学院生になって、まさか大所帯の林間合宿をするなんて思ってもみなかったけれど、まさに27人のクラスでフィールドトリップが実施された。

Natural Resource Management(自然資源マネジメント)に関する授業で、コスタリカ最大級のラ・アミスタッド国際公園と世界の生物多様性の2%以上を占めるオサ半島を訪れる、一週間(6泊7日)の長丁場な合宿だった。

そもそも旅好きな自分にはたまらない授業内容だった上に、前回の「グアナカステの木の下で」で書いたForest, Forestry, Poverty (森、林業、貧困)の授業で訪れた4泊5日のフィールドトリップとほぼ同じメンバーが揃ていたので、それはもう心が躍り、一日一日が深い学びと思考と冒険に満ち満ちた一週間であった。

pyomn310.hatenablog.com

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オサ半島のハイキングにて

ラ・アミスタッド国際公園

コロンの街からバスに揺られて7時間くらい。延々と続くパイナップル畑を横目に、じりじりと南中する太陽にほおを焼かれながら、バスがじゃり道に揺れるに身体を任せる。

ASOPROLAという小さくも歴史ある団体の建物にお邪魔をして、最初の二日間宿泊する。なんとも美しいタイルと絵画で装飾された建築に目を奪われながら、座りっぱなしでこわばった身体をぐっと伸ばした。到着が遅れたので昼食は15時。チャーハンと豆とポテトチップスと野菜が乗ったプレートが配膳され、それを食す。普段食べないけれど、知っている味。コスタリカの料理の味。おいし。

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ラ・アミスタッド国際公園は、コスタリカ最大のナショナルパークであり、生物多様性の宝庫である。
アミスタッドは「友情」を意味しており、この公園がコスタリカからパナマまで続いていることが由来だそうである。

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そこらじゅうにオオハシやサギ、そのほか見たことのないようなカラフルな鳥たちがいて、施設の周りを見渡せば、どこまでも緑に覆われた山脈が続いている。

その後宿泊施設から少し離れたところまで、にわか雨の中を歩いて森を守るレンジャーの話を聞いた。
たった9人で4万ヘクタールの地をパトロールしているらしい。
また政府は、国際公園の保護に以前ほど資金を回さないらしい。これは統計的に森林伐採のレートがかなり減り、状況が「改善」されたことによるらしいけれど、それによって自然保護に携わる人たちの労働環境が過酷になるとはなんとも皮肉な話だと思ったりした。

じめじめして暑い日中からは考えられないくらい夜はものすごく冷えるが、シャワーは水だったので修行僧のように(?)頭から浴びた。
二日目の夜は断水で、ハイキングで汚れた身体を流せない人が大半だった。(私はせっかちなので、晩御飯すぐにさっさと浴びた。用事を早く終わらせる癖が活かされたね。)

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夜のディスカッションは泥沼。「環境」って一体なんなんだろうな?

朝にいただいたコーヒーの味が、本当に優しくてほろ苦くて、でも少し酸っぱくて、絶妙なバランスで、一日に3杯は飲んだ。
Frijores (コスタリカの煮豆で米やじゃがいもと一緒に食べる)とか白身魚のフライとか、とにかくコスタリカの家庭料理的なのがたくさん出されたことが嬉しくて、ついつい食べ過ぎた。

数人の友達と朝早く起きて、日の出を見に歩いたこと、
休憩時間に休憩せずにガイドに厚かましくくっついて、秘密基地のような場所を見つけたこと。
コーヒーの実や、フルーツから取り出したばかりのカカオの豆をかじったこと。

まるで子どもみたいに真っ直ぐ無邪気に、一つ一つを楽しんだ。歳なんて関係なく、そんなふうにありのままの心で経験できることを嬉しく思った。
そして夜はヘトヘトになって泥のように眠った。

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森に住むアーティストが作り上げた基地
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宿泊先ASOPROLAの壁画とタイル装飾

オサ半島

ラ・アミスタッドで2泊したのち、私たちはさらに南下した場所にあるOSA PENINSULA(オサ半島)へ向かう。
この半島は太平洋沿いに位置していながら、特殊な湾岸になっていて世界の2.5%の生物多様性が詰まっているとい言われている、いわば自然の宝庫だそう。ラ・アミスタッドは世界遺産なのだけど、オサ半島も負けないくらいに研究者や自然保護団体にとって貴重な場所なのだそうだ。

朝晩冷え込むラ・アミスタッドと違って、オサ半島の気温は高く、さらに湿度もかなり高かった。
私たちが滞在したのは、LA TARDE(ラ・タルデ)という現地の家族が運営している山中の小規模な宿泊施設だった。

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かつて、農家さんだった彼らはさらに収入が増える方法を考えていた。
少量の金が所有地に流れる川から取れることや、ここでしか見られない動植物が見られることに目をつけ、ここへ観光客を呼んだらどうかと始めたのがこの宿泊施設だったという。

寝室はトタン屋根で四本柱の長屋に網戸が前面に貼られた箱のような設計だった。そこに12台のシングルベットがずらりと並んでいる。なんというか清々しいくらい素朴だった。
クラスメイト11人と一緒に三日間眠る。電気はないので夜は懐中電灯を持ってうろうろする。シャワーは水。スピーカーを持ってきた友達が、休憩時間に寝室でクラブミュージックをかけて踊っていたり、ベッドとベッドの間にロープをかけて靴下やタオルを洗濯し出す子がいたり、朝の4時くらいから猿や鳥の声がうるさ過ぎて眠れなかったり・・・そういう特殊な体験を今後の人生の中で再びすることはあるだろうか。

そこに大きなゴキブリが出て、友達が私に抱きつこうとしてベッドの角に足をぶつけたこと以外は、特に問題なかったし、快適だったように思う。
特にいいなと思ったのは、電気がないこと。夜、暗くなったら眠ることができること(朝方人間なので)。そして、携帯の連絡を気にしなくていいこと。

ここで出された食事もとても美味で、家庭的で、やはり食べ過ぎたような気がする。
人にご飯を作ってもらうって嬉しいなあ。

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どこまでも思考する

一週間森の中で、ひたすら環境保護団体や現地に住む人々の生活状況などについて話を聞きながら、森の中を延々と歩きながら、そして27人の集団の中に埋れながら、いろんなことを考えた。

アメリカ人が多数派のこのグループで、いざ会話に乗ろうと思ってもなかなか気が進まないのは、ネイティブとノンネイティブの壁だと思い込んできたけれど、どうやらただの趣向の違いで、自分が会話の内容に興味がないからなんじゃないかと思い始めてきた。
日本語でだって、乗りたくない会話もある。そして英語だからといって意味がわからないわけではないではないか、とようやく気付いたのである。

逆に大人数グループではなくて1人や2人など数人と話をすることができたのは良かった。
普段あまり話したことのない人のひととなりを知ることができた。
めちゃくちゃすごい才能を隠し持っていたり、将来自分と似たようなキャリアを目指している人がいたり、私と同じように「どこまでも思考する」人もいた。ハンモックに揺られながら、途切れ途切れ他愛のない会話をしながら、読書をした自由時間とその後に見た夕日は、忘れられないなあ。

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一つ悔しかったのは、現地の人の話を、先生の通訳なしでは理解できなかったということ。
きっとスペイン語ができたらもっと深い質問ができただろう。そんなふうに何度も思った。

けれど所詮1年しかコスタリカで過ごさない自分にとって、そして彼らの言葉を話さない私は彼らにとって、これ以上ないくらい「ツーリスト」で「外国人」なんだ。別にそれは悪いことではないとは思うし、英語で先生やスペイン人・メキシコ人の学生が通訳してくれたおかげで問題なく理解できた。けれどやっぱり、悔しいなあと思う気持ちが拭えない。

言語はいつまでも、私の課題であり、改善し続けなければいけないものだと思っている。
外国語を話すことが好きだし、通じ合えば尚楽しいものだから、学ぶのを止めないでいたい。
たくさん間違えても、うまく伝わらなくても、コスタリカの多くの人たちは懸命に耳を傾けてくれるから今のうちにもっと頑張ろうと思う。

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最後に自分の内向性と外交性について。

よくクラスメイトと、「自分はIntroverted(内向的)か、Extraverted(外交的)か」という話をした。そんな話をしている中で、日本にいた頃は外交的だと思い込んでいた自分の中にも、コスタリカへきてからとても強い内向性があることを発見した。
一人でいたい。毎日自分の作ったルーティンを壊したくない。パーティーが苦手だ。大人数の旅行は避けたいーーーそんな心持ちでありながらも同時に人が恋しくなったり、一緒に誰かとお酒を飲んだりご飯を作ったり、遠くへ出かけたいと思ったりもする。そういう二面性の自分を初めて言葉にして誰かに伝えたのが、森の中でハイキングをしている時だった。

人の性格は一言では全く表せない。深くて複雑で、結構矛盾していたりする。日替わりだったりもする。
私は、どこまでもオープンでとってもアクティブで、ずっと一緒に誰かといるのが落ち着くというクラスメイトを見て、自分が「彼・彼女と比べて」内向的だといっているのかも知れない。人が好きだけど、一人の時間も好き。まあ、それでいいじゃないかと、やっぱりお気に入りのハンモックで木漏れ日を浴びながら思うのだった。そして少なからず、他の人もそんな自分の多面性を言葉にできるくらい、リラックスして話をしてくれていた。

色々と書いたけれど、本当に最高の合宿だった。
まさかたくさん論文を読んだり書いたりするイメージのあった大学院で、こんな実技的なイベントに恵まれるなんて思っても見なかった。
コロナ禍で中止も呟かれていたけれど、7日間全員健康で過ごすことができた。
そして何より、めっちゃ面白くてユーモアで個性たっぷりで国際色豊かなメンバーと、旅ができたことは幸運だった。

コスタリカの大学院生活も残り5ヶ月。
大切に、過ごしていこうと思います。