Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

摩耶礼賛

昔の国語の授業の内容なんて、何にも覚えていないけど、『陰翳礼讃』っていうエッセイのようなものを授業中に学習していたときのことだけは、なぜか覚えている。

和食とその器についてのワビサビをひたすら称賛してる文章なのだけど、それはもう和食が美味しそうに書かれていて、お昼前の授業なんかだともうお腹が減って仕方がなかったよね。


このタイトルもすごく好きで、「礼賛」って言葉、なんかいいよな。
賞賛でも、賛成でもない、絶妙なこの言葉・・・良いのです。


摩耶さよならありがとう。


一年住んだ、神戸の街を後にした。

去年の夏、コンクリート、揺れる陽炎、蝉の鳴き声が降ってくる道を歩いて、
汗だくになりながら、初めてそのシェアハウスを見学した。

リビングには大きな窓があって、窓際にたくさんのドライフラワーと植木が並べてあった。
太陽の方へ向かうようにその植木は窓沿いに葉を揺らしている。食器棚の上にはアンティークな置物とかが静かに陳列されている。

直感的に「私は多分ここに住むんだろうな」と感じた。
予想通り見学の数週間後には、両手に抱えられるほどの荷物を持ってその部屋に住み込むことになった。
それから少しずつ荷物を運び込んで、着実に自分の城ができていった。

シェアハウスでわいわい過ごした日々。
一年というと短いけど、充実感でぎゅっと凝縮されたような時間だった。

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JICAで働き始めてから神戸へ頻繁に行くようになり、農業体験に飛び込み、ものづくりやさまざまな個人事業を行う方々との出逢い、
灘という山と海に挟まれたのどかな街で、数知れず散歩をして、音楽を紡いで、ご近所さんで集まって小さな宴会を開いた。
自身の手から新しいものを作り出せる人ばかりで、本当に素敵な出逢いばっかりだった。

最後の三ヶ月は、オンラインで大学院の授業を受ける日々だったから、
あまり外にも出ずに、ひたすら商店街の八百屋の激安野菜に頼り切って自炊を極める日々。

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例の激安野菜たち

商店街の市場や八百屋には旬の野菜が並ぶから、どの季節にどの野菜が美味しいのかも、なんとなくわかるようになったし、
その季節に美味しい野菜は、暑い時には身体を冷ましてくれて、寒い時には温めてくれたりと健康にもつながることがわかった。
これまで調理したことがなかったソラマメとかモロヘイヤとかカブラとかも、八百屋のおじさんが美味しい食べ方を教えてくれるので、ついつい手にとっては発見を繰り返した。

近所には美味しい居酒屋さんやレストランがいっぱいあるので、たまに自炊をサボって大好きな韓国料理や蒸し野菜料理を食べに出かけた。
市場で買い食いしたり、三宮で時々行われるファーマーズマーケットで地元野菜とか雑貨とかお菓子とかを堪能したりもした。
eatlocalkobe.org


家があるから、旅も楽しい

拠点がこれだけ充実していても、旅欲は健在だったので、コロナ禍で海外は断念せざるを得なかったものの国内旅行をした。
奈良へ日帰り旅行をしたり、四国を縦断したり、姫路で全力で遊んだり、熊本でたらふく美味いものを食べたり・・・。その辺は写真が語ります。

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奈良 曽爾村 去年の秋
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高知 にこ淵 去年の秋
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姫路 今年の冬
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熊本 阿蘇山 今年の春

こんな楽しい旅ができたのは、スーパーアクティブな友達がいたことや、「ただいま」と言える家があることや、自分が好きと思える空間がホームにあったおかげなんだと思う。旅の余韻にゆったり浸りながら、撮った写真を見返しておうち時間を過ごすのも楽しみの一つだったり。

リュックサックバンド

もう一つどうしても書き留めておきたいことがある。
中学生の頃ぐらいからずっと夢に見ていたバンドを組んで、ボーカルをさせてもらったこと。週末に集まって練習したこと。シェアハウスの屋上で、映画みたいな演出でセッションしたこと。そして美しい摩耶山の広場で歌わせてもらったこと。

大学でジャズ研だったときはひたすらピアノを練習して、スケールやらブルーノートを使った伴奏を勉強していた。
主旋律を自由自在に表現するサックスやヴォーカルの音を聞いて、いかにその音を生かすかを考えながら弾いていた。そもそもピアノソロも超苦手で、大体不協和音を奏でてしまうのでずっと裏方で居たいと思っていた。

でも、それから数年経った今になって、なんだかすごく歌いたくて仕方がなくて、ギターを買ってひとり部屋で練習していた。
するとご近所さんの多くが実は何かしらの楽器ができるということで、そのご縁から集まるたびになんとなくいろんな曲を合わせるようになって、摩耶山で月に一度行われるフリマイベント「リュックサックマーケット」で歌わない?とお誘いをいただいたのだった。

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その名も「リュックサックバンド」

雨続きだった時期には、灘中央市場の防災空地を借りて歌わせていただいたりも。

歌が上手いわけでもないし、これまでどこかで歌った経験もなかったので(カメルーンのとある結婚式で歌っただけ)ちょっぴり恥ずかしいけれど、超上手い楽器勢の皆様に甘えて思い切り歌わせていただきましたとさ(笑)

摩耶山が晴れた日に、海をバックに歌ったあの日は本当に忘れられないなあ。

摩耶礼賛

ともあれ、そんなぎゅっと凝縮された一年を過ごしながらも、大学院入学が決まり海外行きが決定し、また国際協力の道に一歩近づけた。
勉強にも集中できる環境でした。きっと週末に思い切り遊べたおかげで、平日にエネルギー満タンで勉強に励めたのかもしれない。
摩耶での日々は楽しくて、ここで過ごせて本当に良かったなあと思いました。

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最後に近所の超素敵なゲストハウスを紹介させてくださいな。
内装はとても独創的で木造の優しい空間。スタッフの方々はみんな温かくて、美味しいブレンドコーヒーを淹れてくれます。
神戸に来られる方はぜひこのゲストハウスへの宿泊をご検討くださいな!
kobemaya.com

摩耶にはしばらくさよならだけど、もう私の第二の故郷なので、また帰国した際には必ず帰ってきます。
本当にありがとう!

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摩耶山からの夜景