Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

パレード(マラケシュ旅行記)

モロッコにある盆地、マラケシュという街は商業都市であり、観光地として有名である。

大学時代に歩き回ったあの街で、言葉の壁に葛藤の感情を抱きながら、フレンドリーな態度で近づいてくる商人たちの客引きを体験した。カラフルで混沌としている、パワー溢れる街であったと記憶していた。

今回は仕事で駐在をしていることからも、前回の観光客としての心持ちとは少し違っていた。また、現地の友達数名との旅だったので、言葉の壁(アラビア語)にそれほど悩むこともなかった。

首都ラバトから電車で約3時間、10年前と変わらぬ赤い町がそこにあった。

「タンジーヤ」(Tanjiya)という壺の中で煮詰めた牛肉の煮込みをモロッコお馴染みのパン「ホブス」でいただく。
様々な工芸職人たちが集まるマラケシュだからこそ、火加減などを気にせず長時間ほったらかしにできるこの料理が名物になったのだそう。

マラケシュの郷土料理タンジーヤ作り体験 | ツアー関連情報 モロッコ | 風の旅行社

腹ごしらえをして、Riadと呼ばれる古くなった邸宅をリノベした宿泊施設に移動。タイル張りの壁や荘厳な雰囲気のテーブルなどがとても特徴的。

メディナ(旧市街)に向かう頃には陽が高く昇り、34度ほどの気温になっていた。どこもかしこも壁は赤(ピンクに近い色)で、晴天の青空にとても映えている。

ギラギラ照りつける太陽の下で、暑さに負けじと観光客たちが長いツバの麦わら帽子をかぶってカメラをぶら下げ、必死で商人と土産の値段交渉をしている。

商人たちは負けじと客引きをし、笑顔で商品をすすめる。オレンジジュースを売るおじさんたちが、屋台から手を振っている(うちのジュースを買ってくれ〜と叫んでいる)。
10年前、私はあの光景の一部にいたなあと、懐かしくなる。


陽が沈むと、本当のマラケシュの喧騒がやってくる。
マラケシュの名物であるジャマ=エル=フナ市場は、マラケシュにくれば誰もが必ず訪れる中心地。

人ごみもいいところで、友達とは腕を組んで歩かないと迷子になりそうなほどであった。

モロッコランプには火が灯され、ゆらゆらと光が揺れている。
気温が下がり、すこし冷たい風が吹き始めるとGnawaという伝統音楽がどこからともなく流れてくる。

マジックショーやダンスがあちこちで行われ、綿菓子や光る風船が売られていて、人だかりが大きな広場を埋め尽くす。
そのエネルギーに圧倒されながらも、友達のダリジャ(現地語)に耳を傾けながら、とにかくこの瞬間を見逃すまいと写真を撮った。

街はパレードそのものだった。
10年前に感じた混沌という印象は、ポジティブなものでも、ネガティブなものでもなかった。観光客として言葉もわからずに、戸惑いながらこの街のパワーに身を任せていた。というか任せるしかなかった。

今の私は、こう思う。
次から次へと色んなものが披露され、最初と最後が曖昧で存在しないパレード。

人々は日々の暮らしに慣れ、それを平凡と呼ぶ。このパレードの街は非凡だ。落ち着きがなく、どこまでも愉快だ。そして人々はとても情深く温かい。

友達が言うには、マラケシュの人々の現地語のアクセントはとても特徴的で、ラバトの人とは非常に異なる話し方をするらしい。まるで関西弁のように。

道を聞くと、人々は身振り手振りを使って、2分くらい丁寧に説明してくれることもあった。そういった姿を見ていると、故郷の大阪を思い出すのだった。

平凡と思っていた故郷の景色と生活は、今ではとうの昔の話で。
非凡と思っていた憧れや夢が、事実生活の一部になり始めていて。

そんなことを、改めて噛み締めてみる。

ああ私は、モロッコにいる。
この瞬間を楽しまなくてどうする、と。

パレードは終わない。