それはもう途方に暮れそうなくらい、たくさん考えることがあった。
もともと、考えすぎる癖があるから気をつけなくてはいけない、わかっているのだけどね。
忙しなく毎日を過ごして、自分はしっかりした足取りで歩いている気になっていた。
ふと立ち止まって振り返ったら、どうしようもない寂しさみたいなものに襲われてしまうから、
ギターを抱えて、ヘタクソな歌を歌う。おもい立ったら筆を執り、弱音を吐いたりつよがったり。
変なの。
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お酒の場で、記憶がすっ飛ぶくらいに酔ってしまったことがあった。
夜に光を灯す街の彩が綺麗で、泣いてしまいそうだなあ、とやけに感傷的。
シャッターの閉まった「がらん」とした天神橋筋を夜中にチャリンコで駆け抜けたり
混沌とした波を打つ淀川を長柄の橋からぼんやり見下ろしてみたり。
ふわっと吹き抜ける風がすでに冷たくて、秋がすぐそばに在る気がして。
日本の四季を心で愛でていた。
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あなたが云うその言葉が、本音とも不変だとも思わない。
出逢ったばかりの人なんてな。っておもったりもしたが、
底知れぬ人間の中身なんて、あんまり知らない方がお互い楽だったりするのかも。
ただ確かなものにすがり付きたいと願い、ちょっと信じたくなっただけ。
人との距離感に、戸惑うこともあったりする。間違えたりもする。
つかず離れず、そんな風に居ることが憧れね。
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ただなんとなく「こうすれば」みたいなのが頭の中にあって、
ちょっと自分の立ち位置を変えてみたら、びっくりするくらいいろんな発見があって
「よしやるぞ」と意気込んだことが、
あまりに平凡に実現してしまって、ちょっと呆気に取られたりする。
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自分の部屋とか、自分の自転車とか、居場所を確保し、自分の使うものを自分で作ってみたり。
そうするうちに、いっぱいの出逢いと別れとが交錯してって、
毎日何かしら新しいことが起こっては変化して、思い出になってく。
そういえば、襲いかかってくるものがなくなってきたなと気づく。
寂しい気持ちはずっと心にあるけど、知らんまに、笑って過ごす日々が戻ってきた。
いろんなことがあったなと思うけど、結局は自分は自分で、何も変わらん。
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結局歩いていて落ち着くのは下町の商店街で、好きなのはカラフルな靴下で。
身に付けるものも、過ごす人も、選んでいるような気でいるけど、
実際のところは「なんとなく」で向かった方向に漂って、偶然たどり着いた結果なだけなのかも。
そう云うことを、神戸の水道筋を散歩しながら考えていた。
ほんと、変なの。