Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

カリブ海弾丸旅行記

どこまでも伸びていきそうな木々と、白い砂と透明な海。
カラフルな果物と小麦色に焼けたサファーたち。

時が止まっているようで、流れているような。騒がしいようで、静かなような。
熱風と燃えるような日光でうだる体を優しく冷ましてくれるさざ波と砂。

ただそこに存在する大自然を前に、たちすくんでいる、ちっぽけな自分。

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Puerto Viejo

私が暮らすCiudad Colonから車で約5時間、峠越えをしてカリブ海側の街へ向かう。
レンタカーに詰め詰めで7人乗車し、数日前に知り合った学生同士でお互いの様子を伺い合う。前日に来ることを決めた2人はバスで移動し現地合流。
携帯のSimカードも買わず現金も持たずに飛び出した友達を見て、案外なんとかなるもんなんだと感心。

コスタリカでも有数の観光名所であるプエルト・ビエッホは、海水浴も森林浴も楽しめる場所。
ぎゅっと凝縮された小さな街に、レストランや土産屋、サーフィンや自転車レンタル所が立ち並んでいる。
みんなノンスリーブやら水着姿で、おそらく現地人と同じくらい外国人がいた。のんびりしたリゾートだ。

住んでいる場所とは全く雰囲気を異にするその街を、ゆっくり歩きたかったのだけれど、
それぞれの行きたい場所が同じなわけもなく、それぞれがその時々に必要としていることは見事に全く逆方向だったので、
私は写真も散歩も諦めて、とにかく譲歩することにした。

それでも海をぼんやり眺めて、空が紅く色を変えていくそれだけで、来てよかったと思えた。

また来ればいい。そう思った。

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九人九色

文字通り9人での大所帯旅行。

スペイン人の留学生の瞳は水色で、
キルギス人の留学生の髪はさらさら波打っていて、
アメリカ人の金髪がキラキラと太陽に照らされ輝いている

写真を見返せばその充実感がありありと脳裏に蘇る。
五感で感じた楽しさと戸惑いと疲労。全てがしょっぱい海の味とともに思い返される。

それぞれの文化と生き方、それぞれの言葉、それぞれの価値観は当然異なった方向へと向かう。

理解しあったり意見を正直に言い合ったりするほど親しくない相手同士で、2泊3日の旅行は難しいかと考えていたけれど、
一人一人があまりにも自由な発想と行動力を持っていて、呆気に取られるほどマイペースな人々(多分この場に日本人がいたらみんなそう思う)だったので、変な心配をして頭痛を起こしているのは自分だけだと気づいた。

計画性のない弾丸旅行。
それでも私は、元協力隊であり国連平和大学の先輩である友達から紹介された「森の達人」に会いに行きたかった。
だから自身の想像力をなんとか振り絞って、時間と人数を先方と調整し、イメージもできない宿泊所と本当に実現するのかわからないナイト・ハイキングや農場見学に賭けたのだった。

一緒に行こう。きっと楽しいから。

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森の達人の話

ドイツ人のケンさんは、ドイツ語はもちろんのこと、スペイン語、日本語、英語、コスタリカの先住民BriBri族の言葉を話す。
Planet One Worldと名付けられた家は、プエルトビエッホの中心地から車で約20分ほど山へ入っていったところにある。

観光としての農場の見学、生物多様性溢れる森のハイキング、レンジャーを鍛えるボランティアの受け入れ、先住民族とのコミュニケーション(領地に関してのルールや狩りや資源の共有)など、さまざまな形で、現地を紹介しているすごい人。
学者と連携して自然エネルギーをどこまでエコに、持続的に運用できるかなどもたくさん説明してくれた。

20年以上コスタリカに住み続けていて、森のことや自然エネルギーについて話すときの目がギラギラするケンさん。
きのみをとってとうもろこしの粉でパンケーキを焼いたり、大きなフルーツの身を割いて揚げたりするケンさん。
彼と過ごす時間は初めてのはずなのに、なんだか懐かしくて落ち着いた。

彼がPlanet One Worldの入り口で、日本語で迎えてくれたとき、疲労と達成感と出逢えた嬉しさで涙がでそうになったのは、ケンさんには秘密だ。

特に無計画な旅行で9人全員が満場一致でケンさんのところに来てくれたことだけでも奇跡だったのに(「疲れたからホテルで休むわ」、とかいう人が数人出ると思っていた)、ナイトハイク(3時間くらい歩いた…)も翌朝の農場見学もケンさんのアドリブ講義にも参加できて、他のメンバー全員が盛んに質問しまくって、無限なのかと思うほどの体力で山を歩き続ける姿を見て、ああ、環境を勉強するメンバーってこんな感じなんだ。こんなに意欲的で、こんなに適応力があるんだ。と感動した。

つまり、森の達人の話を9人でじっくり聞くひと時を過ごして、
方向性バラバラだった私たちは、ちょっと距離を縮めることができたのである。

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Planet One World Volunteering Costa Rica - YouTube


帰路

帰路は2人のドライバーに甘えて眠ってしまおうと思っていたけれど、私たちは眠らなかった。
しばらくの間は、綺麗な海沿いの道路を眺めながら無言でぼんやりしていたのだけど、途中から車のBGMをこぞって選びながら、お互いの好きな曲や映画を語り合った。好きな食べ物、好きな動物、興味のあること…そういう他愛のない会話を5時間延々と続けた。

私は彼・彼女らがどんどん挙げるタイトルをプレイリストに組み込んだ。
ロックもジャズもバラードもテクノも、英語もスペイン語もロシア語も日本語も混ざり合ったプレイリストだ。

ちなみに映画の話になった時に、ジブリをみんなに勧めたら、結構みんな知っていて、
「平成狸合戦ぽんぽこ」をメンバーの中のアメリカ人が熱弁してくれてとても嬉しかった。

環境学部専攻同士、これからも色々と話が合いそうである。

圏外の山中で渋滞した以外はスムーズな帰路だった。首都のSan Joseが峠を越えた頃に見えてきた。キラキラと街の明かりが、雨上がりの澄んだ空気の中で揺れていた。

こうして穏やかに、弾丸旅行は終わった。
疲労しているはずなのにしばらく興奮状態で眠れなかった。

写真を見返して、当時の感覚を思い出して、いかに新しい体験だったかをもう一度確認する。

旅行の翌日から二日間はオリエンテーションが始まり、国連平和大学の授業がとうとう来週から始まろうとしている。

20人越えの世界中の学生と肩を揃えて、気の引き締まる思いで感染対策の話を聞いて、キャンパスの敷地内のハイキングで猿や珍しい虫を見て、同じAPS(Asian Peacebuilders Scholarship)生の同期と話をしたりして、現実離れしたこの旅行は少しずつ鮮やかな記憶として脳裏で落ち着いて馴染んでいっている。

コスタリカに居るということも十分特別なことなのだけど、
一緒に居る世界中からの留学生と過ごすことで、二重に特別がやってくる。

その分情報量が多くて、楽しい機会が際限なくやってくる。

こういう時に大切にしなきゃいけないのは、自分のペース。
全てに参加していたらいつか体調を崩すから(カメルーンで体験済み笑)体力を万全に、食生活は健康的に、そしてしんどい時は無理せず休むこと。海外生活では結局これが一番大切なんじゃないかなあ、と、初っ端からハードな弾丸旅行しておいて語ってみる。

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