Smeh liya Morocco - スマヒリヤ・モロッコ

モロッコ駐在生活のことを中心に、色んなことを書いてます。

雨と、酒と、夜と。

コスタリカの雨にはたくさんの種類がある。

ぽつぽつの雨、霧のような雨、大粒のぼたぼたな雨、細かい雨。
午前はびっくりするくらいクリアな青空が広がって、日光がギラギラと地面を照らして陽炎が揺れる。
それなのに午後になると必ず暗い雲がやってきて、毎日おおよそ同じ時間に、冷たい風と雨を運んでくる。

雷が鳴ると、真っ暗になった空が一瞬明るくなって全部がフラッシュで飛んだような景色になる。稲妻は太くてギザギザ。まるで絵画のよう。
きっと日々がのんびりゆっくり過ぎていくから、こんな些細な風景の変化が全て美しいと感じられる。

カメルーンでもよく「雨」や「麦酒」をテーマに文章を書いた。理由を考えてみると、雨の日はどこにも出かけられないから色々と思考を巡らしてしまって、酒をついつい手に取ってしまっていたからなんだと思う。悩んで悩んで、思考をぐるぐると巡らせて、答えのない問いを投げかけ続けていたあの日々からはや5年が経った。少しは、変わることができただろうか。

>>>カメルーンでの5年前のブログ

ameblo.jp

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とある夜、国連平和大学の学生で集まった。10人以上の学生が集まってお酒を飲んだその日、始めて大雨の中を歩いた。
その日の雨は大粒で、ちょっと大袈裟にいうと滝のようだった。容赦無くコンクリートの上で水滴が跳ねる。

全く人気のない道路のど真ん中に拳くらいの大きな蛙が堂々と座っていた。
気持ちよさそうに夜の雨を浴びているその姿を見て、濡れないようにとたくし上げていたズボンとか必死に傘をさして守っていた鞄とかが急にどうでもよくなって、傘をほっぽり出して思い切り雨のシャワーを浴びたい気持ちに駆られた。
でも、一緒に歩いていた相手がびっくりすると思ったので、心で妄想するにとどめた。


辿り着いたとある学生のおうちにはバーのように世界中のお酒が並んでいた。
(私の中での)南国の定番、ピニャ・コラーダを注文すると、要領よく彼はカクテルを準備してくれた。甘過ぎず、強過ぎない、優しいピニャ・コラーダが雨で冷えた体をちょっぴり温めてくれた。

アメリカ、スペイン、ドミニカ、キルギスタン、ベトナム、タイ、スーダン、カメルーン、スリランカ…
世界中からやってきた学生と、その夜に、その場所で、たまたまこのタイミングで出逢って、話をして、一緒に笑った。冗談を言い合ったりしながらも、時々真面目な話になるとやっぱりみんな本気になった。瞳がキラキラしていた。誰しもが目指す何かがあって、ここに居た。そんなかっこいい人々に囲まれたこの環境に居られることを、心から感謝した。

久しぶりに飲んだ赤ワインは、渋くて、強かった。喉に流れ込むアルコールが会話に熱を運び込んだ。たくさん話した。スペイン語がわからなくて日々苦悩している分、この日に英語で話ができてとても安心した。
何人かはバルコニーでタバコを吸った。どこか絵画のようで、タバコを吸えたらあんな風になれるかなあ、なんて、人生で初めてタバコに憧れた(とか言って、吸わないけど)。

雨が止んだのは深夜に近づいた頃で、それでも私たちは話し足りなかった。

夜もしっかり更けた頃に、眠気とちょっぴりの酔いを抱えて、空っぽの道を歩いた。虫の鳴き声だけが響く沈黙が、闇夜の美しさを思わせた。素敵な時間だった。

ずっと憧れていた場所だった。ずっと来たい場所だった。
だから、欲張りな私は、全ての瞬間を切り取りたくなる。五感で汲み取った全てを写真みたいに残したい衝動に駆られる。
そんなこと、できやしない。わかっている。でも、全て残せないとしても、やっぱり私は、書くことをやめられないんだな。

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